- そもそも遺伝子組み換えってなに?
- 遺伝子組み換え食品は食べても安全?危険?
- 遺伝子組み換え食品って例えばどんなものがあるの?
日本は食料自給率の減少が進み、対して遺伝子組み換え農産物の輸入(とくにアメリカ)は増えています。
遺伝子組み換え農産物を原材料にした食品は、生活のいたるところに現れはじめました。
だからこそわたしたちは遺伝子組み換え食品について深く理解する必要があります。
この記事の前半では
そもそも遺伝子組み換えとは何か?や、遺伝子組み換え食品の危険性などの情報を解説。
後半では
遺伝子組み換え作物の輸入消費大国な日本の現状や、できるだけ避けたい遺伝子組み換え食品もご紹介。
この記事を読むことで、日本や世界の遺伝子組み換え食品の現状を知ることができます。
健康意識の高い方やお子さまがいるご家庭の方はぜひご参考ください。
この記事では遺伝子組み換えのことを、略称の「GM」と多々表記しています。遺伝子組み換えだと長いので…(笑)。
GMが何の略かは冒頭で解説していますよ!
この記事では主につぎの本を参考にしています。
遺伝子組換えの基礎知識
遺伝子組み換えとは?
別の生物から取り出した有用な性質をもつ遺伝子を、その性質をもたせたい作物などの遺伝子に組み込み、新たな性質を持たせる技術のこと。
たとえば魚の遺伝子をトマトに、バクテリアの遺伝子を大豆に組み込んだりします。
農薬に耐性をもった作物や、殺虫性をもった作物などが世界中で栽培されている現状。
遺伝子組み換え技術により開発された作物は、
- 遺伝子組み換え作物
- GM作物
- GMO
などと呼ぶのが一般的です。
GMとは「Genetic Modification」の略で、遺伝子組み換えという意味。
GMOは「Genetic Modification Orgasnisms」の略で遺伝子組み換え作物になります。
Column
【一歩間違えればバイオハザード?遺伝子組み換えでできた光るメダカ】
遺伝子組み換えメダカを育てたなどとして、カルタヘナ法(生物多様性に悪影響をおよぼすことを防止する法律)違反の疑いで5人の販売業者が逮捕された事件。
この事件ではイソギンチャクモドキの赤い色素を含む遺伝子を、ミナミメダカに組み込むことで「光る」メダカがつくられました。
これまで地球上になかった生物が外に出てしまうと、生態系が崩れるおそれも。
この事件では倫理的な問題もあがりました。
遺伝子組み換えが広まった背景
遺伝子組み換え種子の世界シェア90%以上を占める、アメリカの多国籍化学バイオメーカー『モンサント』。
『モンサント』が主力製品である「ラウンドアップ(除草剤)」とGM種子を、セットで販売したことで世界中に広まりました。
『モンサント』がつくったラウンドアップは強力すぎて、育てたい作物まで枯れてしまいます。
そこでラウンドアップ耐性をもつGM種子を開発し、ラウンドアップとGM種子のセット販売が開始されました。
2018年6月、モンサント社はドイツの製薬会社『バイエル』に買収されたので、現在はバイエルが開発・販売しています。
モンサントについて
モンサントはポリ塩化ビフェニール(PCB)や枯葉剤、牛成長ホルモンの開発企業としても有名。
枯葉剤はベトナム戦争で猛威をふるい、大量散布後は奇形児が異常に生まれたことで大きな問題にもなっています。
遺伝子組み換えのメリット
- 除草剤(農薬)に強い作物をつくれる
- 害虫耐性(殺虫毒素)をもつ作物をつくれる
(殺虫剤の使用量を減らせる) - 有用な新しい性質を持たせるのにかかる時間を大幅に短縮
従来の品種改良では何世代もの交配を行い、求める性質が現れるのを待つ必要がありました。
遺伝子組み換え技術を用いれば、新たな性質をもつ遺伝子を組み込むだけで、求める性質をもった作物をつくれるのです。
害虫や雑草がだんだん農薬や殺虫毒素に耐性をもちだし、結局除草剤や殺虫剤の使用量が増えるジレンマに陥るとも…。
現に『モンサント』はラウンドアップにかわる「XtendiMax」という除草剤と、それに耐性をもったGM種子を開発・販売しています。
遺伝子組み換え技術にメリットはあるといえるのでしょうか?
遺伝子組み換え食品とは?
遺伝子組み換え食品は、GM作物およびGM作物を原料とする加工食品を用いてつくられたものを指す。
GM大豆でつくられた納豆や、GMトウモロコシを使ったスナック菓子などは遺伝子組み換え食品。
また
- コーンスターチ
- マーガリン
- ショートニング
といった、GMトウモロコシやGM大豆が原料の加工食品も遺伝子組み換え食品といえます。
日本に流通するGM作物
2023年現在、消費者庁によれば、日本で流通が認められている遺伝子組み換え作物は、以下の9品目になります。
- トウモロコシ
- 大豆
- ばれいしょ(じゃがいも)
- 菜種(なたね)
- 綿
- てん菜
- アルファルファ
- パパイヤ
- からしな
遺伝子組み換え食品が危険なワケ
発がん性
GM開発企業『モンサント』は3ヵ月の動物給餌実験で影響がみられなかったことで、遺伝子組み換え作物は安全だと主張。
ところが2012年、フランス・カーン大学のセラリーニ教授らが行った実験では、腫瘍が4ヵ月目から現れたことで、『モンサント』の主張を覆しました。
この動物実験は、ラットの寿命にあたる2年間行われました。
GMコーンのみを与えたり、除草剤ラウンドアップを微量に混ぜた水とGMコーンを与えるなどの給餌実験です。
セラリーニ教授らの実験では、
- メスでは大きな腫瘍(ゴルフボール大)の発生率が多く、その大半が乳がん
- オスでは肝機能障害と腎臓の肥大などの影響が顕著
- オス・メス共通するのが、寿命が短縮し最大70%が早死に
という結果に。
ラットによる動物実験の結果とはいえ、遺伝子組み換えの安全性を疑う内容といえます。
胎児への影響
殺虫性をもったGM作物(Bt作物・Btタンパク質などと呼ばれている)を妊婦さんが食べることで、胎児にまで悪影響がおよぶ危険性も指摘されています。
カナダのシャーブルック医科大学産婦人科医師らの調査(2012年)では、
GM由来の殺虫毒素が93%の妊娠女性の血液から検出、80%の女性の臍帯血からも検出。
ヒトが食べても腸液で分解されるから問題ないとされていましたが、殺虫毒素の一部は血液に入って全身をめぐり、胎児にまで流れることがわかりました。
とくに妊婦さんはGM作物の摂取を気を付けたほうがよいかもしれません。
アメリカではBtコーン(殺虫毒素をもつGMトウモロコシ)は農薬として登録されているともいわれています。
アレルギー
遺伝子組み換えトウモロコシの成分にアミノ酸の一種である「ヒスチジン」が含まれます。
この「ヒスチジン」が口から入ると体内の酵素で分解され、アレルギー物質である「ヒスタミン」に変化するといわれています。
海外ではつぎのような話もあります。
- イギリスではGM大豆の輸入がはじまって以来、大豆アレルギーが50%増加したと報告
- アメリカでは、子どもの12人に1人が食物アレルギーというデータも
日本でも食物アレルギーのお子さんが増加していますが、遺伝子組み換え食品を食べ続けたこととも関係があるかもしれません。
農薬汚染
遺伝子組み換え作物は、グリホサート系農薬(除草剤ラウンドアップなど)にひどく汚染されています。
グリホサートは農薬の成分のことですが、この成分が発がん性や精神障害などのリスクがあると問題に。
グリホサートの規制を強化する国も増えてきています。
日本では規制強化どころか規制ゆるゆるなので、日本の遺伝子組み換え食品を食べるのはリスクがあるといえます。
日本に流通するGM作物のほとんどがアメリカなどからの輸入品です。
輸送中にまく農薬「ポストハーベスト」の汚染もありえるので、やはりGM食品はなるべく避けたいですね。
その他
- 免疫力低下
- 自閉症
- 糖尿病
- 肥満
- 不妊症
- 学習障害
日本の遺伝子組み換えの現状
義務表示制度
食品表示基準(第3条・18条)では、「9農産物」および、それを原材料とした「33加工食品群」を使用した場合は表示が義務付けられています。
9農産物とはこの記事の前半に載せた、大豆やトウモロコシ、じゃがいもなどが該当。
33加工食品群とは具体的につぎのようなものです。
33加工食品群例
- とうふ
- 納豆
- コーンスナック菓子
- コーンスターチ
遺伝子組み換え作物および、それを原材料とした加工食品を使用した場合、例「大豆(遺伝子組換え)」などの表示が必要。
また遺伝子組み換えとそうでない作物・加工食品が混在する場合は、例「大豆(遺伝子組換え不分別)」といった表示がされます。
任意表示制度
義務表示対象の9農産物および、それを原材料とした加工食品において、遺伝子組み換え作物が混在しないように「分別生産流通管理」が行われたことを確認したものを使用している場合、その旨を任意で表示できる制度。
分別生産流通管理とは生産、流通および加工の各段階で、遺伝子組み換え作物と非遺伝子組み換え作物をきちんと分別し、それが書類により証明されていることをいいます。
詳しくはつぎの表をご覧ください。
パターン1 | パターン2 |
分別生産流通管理をして、意図せざる混入を5%以下に抑えている大豆およびトウモロコシならびにそれらを原材料とする加工食品 | 分別生産流通管理をして、遺伝子組み換えの混入がないと認められる大豆およびトウモロコシならびにそれらを原材料とする加工食品 |
適切に分別生産流通管理された旨の表示が可能 【表示例】 「大豆(分別生産流通管理済み)」 「大豆(遺伝子組み換え混入防止管理済み)」等 | 「遺伝子組み換えでない」 「非遺伝子組み換え」 等の表示が可能 |
遺伝子組み換え作物を極力避けたい方は、「遺伝子組み換えでない」等の表示のものを選びましょう!
表示ルールの抜け穴
遺伝子組み換え作物が原材料の上位4位以下で、かつ、全重量の5%未満の場合は、表示義務がない抜け穴があります。
表示はされないが、実際はGM作物が原材料の加工食品はつぎのようなものです。
- 大豆レシチン(乳化剤)
- コーンスターチ
- マーガリン
- ショートニング
たとえばマーガリンは、パンや焼き菓子などによく使われますが、原材料名をみても「マーガリン」としか表示されません。
つまり遺伝子組み換えが含まれるか判断できない食品が、日本にはたくさん存在するというわけです。
原材料表示ラベルやパッケージにも表示されないため、知らずのうちに食べてしまっている人がほとんどでしょう。
外国は禁止の流れ
日本メディアでは報道されず知らない方が多いですが、外国では遺伝子組み換え作物の規制を強化する流れになりつつあります。
つぎをご覧ください。
安田節子 著.「14.GM規制の国々」.『食卓の危機』.三和書籍,2020年10月19日発行
- イタリア、仏、オーストリアが禁止
- ロシアは2016年にGMの輸入と栽培を禁止。
- スロベニア、アルメニアがGMO不使用宣言。
- 台湾は、米国から大量に大豆を輸入していますが学校給食にGM大豆使用を禁止(2015年)。etc……
『有機農業ニュースクリップ』によれば、メキシコが21年からGMトウモロコシの栽培を禁止しました。また24年までに輸入も段階的に禁止することを発表。
世界的にみれば遺伝子組み換えに対し危機感をもつ国が増えています。
GM作物の輸入消費大国日本
諸外国とは異なり、日本は規制の強化はおろか残念ながらGM作物を輸入しまくっている現状。
詳しい日本の輸入状況例はつぎの表をご覧ください(令和4年10月1日時点)。
作物 | 輸入国 | 総輸入量 |
---|---|---|
とうもろこし (国内自給率0%) | アメリカ(64.4%) ブラジル(22.8%) アルゼンチン(6.9%) 南アフリカ(5.0%) その他(0.9%) | 1527.1万トン |
大豆 (国内自給率6~7%) | アメリカ(71.4%) ブラジル(16.8%) カナダ(10.8%) その他(1.1%) | 350.3万トン |
菜種(なたね) | カナダ(57.6%) オーストラリア(42.4%) | 210.1万トン |
輸入した大豆やトウモロコシのうち、何%が遺伝子組み換えなのか公表はされていません。
アメリカ農務省の作付面積データによれば、アメリカ産大豆の94%がGM大豆です。日本はその7割を輸入しています。
つまり輸入した大豆の大半が、遺伝子組み換えである可能性がひじょうに高いといえるでしょう。
また『バイテク普及情報会』の推定によれば、2019年のGM作物輸入比率は
- トウモロコシ:91%
- 大豆:94%
- 菜種:91%
となっています。
加工食品に使われているコーンスターチや大豆油、菜種油などはほぼ遺伝子組み換えだと考えられるでしょう。
遺伝子組み換え飼料
じつは家畜用の飼料穀物のほとんども輸入に依存しています。
事実『農林水産省』のデータでは、令和3年度の全体飼料自給率(概算)はわずか25%しかありません。
牛や豚などに与えられた「トウモロコシ」や、油を絞ったあとの「大豆かす(脱脂大豆)」といった飼料がGMである可能性は高いです。
つまり牛肉や豚肉を食べることで、間接的に遺伝子組み換え作物を摂ってしまうかもしれません。
避けるべき遺伝子組み換え食品
GM作物およびそれを原材料とした加工食品が、原材料の全重量のうち5%未満であれば遺伝子組み換え表示はされません。
日本はそんな遺伝子組み換え食品であふれています。
ここではラベルを見ても、遺伝子組み換えかどうか見分けがつかない食品をご紹介します。
大豆・コーン油
大量に輸入されたGM大豆とGMトウモロコシは、油をしぼり取り「コーン油・大豆油」として使われます。
これらの油は以下の加工食品に使用されます。
- マーガリン
- ショートニング
- サラダ油
- マヨネーズ(大豆油のみ)
そして上記の食品は、お菓子やパン、ケーキなどの原材料によく多用されています。
必ずしもGM油でつくられたとは限りませんが、GM油の可能性が高いためできれば避けたいですね。
コーンスターチ
遺伝子組み換えトウモロコシでできた「コーンスターチ」。
コーンスターチとはトウモロコシからつくられる「でん粉」です。
サラサラとした白い粉末状で、指で触るとキュキュっとした感覚があります。
このコーンスターチからはさらにつぎの食品がつくられます。
- でんぷん
- 水あめ
- 醸造アルコール
- 異性化糖(ぶどう糖果糖液糖や果糖ぶどう糖液糖など)
これら遺伝子組み換え食品は、炭酸ジュースやスポーツドリンクなどの「清涼飲料水」、「ドレッシング」などの原材料として頻繁に使用されています。
お子さまが大好きなものも多いので、ママさんなどはとくに気を付けましょう。
大豆たんぱく
GM大豆に含まれる大豆たんぱくから、「たん白加水分解物」という旨み成分がつくられます。
たん白加水分解物は「調味料(アミノ酸)」などと同様、強い旨みをもつので幅広く食品に使用。
化学調味料無添加をうたう商品が増えていますが、その裏にはたん白加水分解物が使われていることも多いので気を付けましょう。
食品添加物
以下の食品添加物も遺伝子組み換え作物からできている場合があります。
- 乳化剤(大豆レシチン)
- トレハロース
- 調味料(アミノ酸)
- ビタミンC
- 甘味料(アスパルテームやキシリトール)
- 酸化防止剤(ビタミンC)
たとえば「アミノ酸」や「ビタミンC」は、遺伝子組み換え細菌でできているといわれています。
食品添加物も上位3位以内・全重量の5%以上を占めることはまずないので、遺伝子組み換え表示はされません。
上記添加物も遺伝子組み換えの可能性があることを、頭の片隅に入れておきましょう。
食品添加物は遺伝子組み換えとは別のリスクも考えられるので、極力避けたいです。
まとめ
この記事では遺伝子組み換え遺伝子組み換えの危険性や日本の輸入の現状など、遺伝子組み換えについて網羅的に解説しました。
まとめると以下の通りです。
- GM作物は発がん性やアレルギー、残留農薬などの危険性が疑われる
- 日本は世界でもトップクラスのGM作物輸入消費大国
- ヨーロッパやロシアなど、諸外国ではGM作物規制強化の流れ
- 日本だと原材料の上位4位以下、全重量の5%以下であれば、遺伝子組み換え表示はされない
- マーガリンやショートニング、一部の食品添加物なども、表示はないがGM作物でできている
人体への影響がどこまであるのかハッキリしない「遺伝子組み換え食品」。
日本以外では規制や禁止する国が増えていることもたしか。
安全性が確立されていないからこそ、遺伝子組み換え食品の摂取はなるべく避けたほうがよいかもしれません。
この記事が遺伝子組み換え作物に対する1つの見方、考え方として参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
参考:
- 「遺伝子組み換え」の安全性とは? なぜ賛否両論を巻き起こしているのか|SMART AGRI
- No.214 遺伝子組み換えがもたらす危険|APLA
- 1匹の“光るメダカ”でバイオハザード? ゼロからわかる「遺伝子組み換え」と「カルタヘナ法」|ABEMA TIMES
- 資料をめぐる情勢 畜産局飼料課|農林水産省
- 食卓の危機|安田節子 著
- 子供には食べさせたくない遺伝子組み換えの5つの危険性と影響!GM,GMOって何?|鈴木たか 著
- 日本は農薬・放射能汚染で自滅する!?|上部一馬 著