- 農薬といえばラウンドアップは聞いたことあるけど、ヒトにどんなリスクがあるの?
- ラウンドアップ(主成分グリホサート)に対する対応は日本と外国でどう違う?
- グリホサートに発がん性があるのか知りたい!
上記のような疑問を、NPO法人「日本有機農業研究会」理事・「日本の種子を守る会」常任幹事の安田節子さんが書いた書籍、『食卓の危機』の内容を中心に解説しています。
この記事のおもな内容
- そもそもラウンドアップとは何か?
- ラウンドアップに発がん性があるとする数々の根拠
- 日本メディアが隠すラウンドアップ製造企業の闇
- 多くの国がグリホサート系農薬の使用を規制するなか日本はその逆をいく
日本では戦後、医療がみるみる発達していくことに反して、医療費が年々増加していくおかしな事態となっています。
厚生労働省のデータによると、戦後1954年の医療費は1兆円以下→2013年以降は40兆円越えに!
戦後の異常な医療費増加と、ラウンドアップをはじめとした化学農薬の使用増加は関係しているかもしれません。
この記事を読んで、化学農薬とどう向き合っていくか、考えるきっかけになれば幸いです。
この記事ではおもに以下の本を参考にしています。
ラウンドアップとは?
「モンサント社」が開発・販売
ラウンドアップは1970年、アメリカの『モンサント社』が開発した化学農薬。
どんな植物でも、根っこから枯らすことができる強力な除草剤です。
ラウンドアップの主成分である「グリホサート」が、発がん性など人体に悪影響があるとして、多くの国がラウンドアップの使用を規制・禁止する流れになっています。
くわしくは後述しますが、残念ながら日本は除草剤「ラウンドアップ」の使用を規制・禁止していません。
また、ラウンドアップは有機リン系に分類される農薬。
有機リン系は神経毒性のある農薬で、自閉症や認知症の増加とも関連があるとされています。
モンサント社の基本情報
1901年設立の多国籍バイオ化学メーカー。ポリ塩化ビフェニールやベトナム戦争で猛威をふるった枯葉剤などの開発企業として知られています。
2018年6月、モンサント社はドイツのレバークーゼンを本拠地とする、化学工業・製薬会社の『バイエル』に買収されました。
日本でも名前を変え販売
日本では2002年から『日産化学工業』が生産・販売権を持ち、商品名「ラウンドアップマックスロード」として今でも販売されています。
商品はベルギーにある工場から輸入したものになるので、日本で生産はされていません。
日本では
- もっとも安全な除草剤
- 人体や環境への安全性を確保
- 根まで枯らす力
などのキャッチフレーズで宣伝されています。
日本でもっとも使用されている農薬も、「ラウンドアップ」をはじめとした有機リン系農薬です。
2023年現在でも農家・一般家庭向けに、「ラウンドアップ」がホームセンターや通販などで売られています。
だれでも手軽に買える商品というわけですね。
ラウンドアップによる人体への影響
ラウンドアップの主成分である「グリホサート」。
その危険性について、じっさいに行われた動物実験や研究事例などの証拠を交えて解説していきます。
発がん性分類「グループ2A」
2021年11月、WHO(世界保健機関)傘下の『国際がん研究機関(IARC)』は、グリホサートの発がん性分類を、ヒトに対しておそらく発がん性があるとする「グループ2A」に位置づけました。
『国際がん研究機関(IARC)』による発がん性の分類は4段階で構成されており、つぎのようになります。
発がん性の分類(ランク)一覧
グループ1 | ヒトに対して発がん性がある |
グループ2A | 人に対しておそらく発がん性がある |
グループ2B | 人に対して発がん性がある可能性がある |
グループ3 | 人に対する発がん性について分類できない |
『IARC』ではグリホサートに発がん性があるとする研究論文や、動物実験の証拠などをもとに発がん性の分類を決めています。
グリホサートには発がん性はないとする研究論文や意見が多数あるのも事実なので、どう判断するか難しいところ。
ですが「グリホサート」に発がん性があるのかないのかハッキリしないことが、問題といえるでしょう。
動物実験や研究論文での事例
ここでは安田節子さん著の『食卓の危機』に書かれた3つの事例をご紹介します。
食卓の危機:遺伝子組み換え食品と農薬汚染|安田節子 著
- 2017年、イギリスのロンドン大学研究チームが行った2年におよぶ長期動物実験では、ごく微量のグリホサートを摂取し続けただけで肝臓がんになる可能性が高い疾患が起きていた。
(『サイエンティック・リポート』2017年1月9日)- 国際がん研究機関(IARC)の研究では、グリホサートをよく使用する人が「非ホジキンリンパ腫」にかかる確率が高いことが判明。
この研究の調査はフランス・ノルウェー・アメリカの農民および農業従事者357万4815人が対象。
(『国際疫学ジャーナル』誌2019年3月18日号)- カリフォルニア大学のオンディーヌ・S・フォン・エーレンシュタインらの研究チームが調査したところ、出生前および出生後1年目までにグリホサート系農薬にばく露した子どもが、ばく露していない子どもに比べて、自閉症スペクトラム障害(ASD)になるリスクが高いことが示された。
(『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』2019年3月20日)
マウスなどの動物と人間のからだは根本的に大きく異なるので、ヒトにも発がん性のリスクなどがあることは断言できません。
ですがラウンドアップなどの農薬に汚染された野菜やくだものを食べることが、さまざまな人体への影響をもたらす可能性も否定できないでしょう。
畑で使用した農薬が空気中を漂っていることも考えられます。
家の近くに畑があるご家庭の方や通勤や通学で畑のそばを頻繁に通る方は、知らずのうちに農薬が肌に触れたり吸っている可能性があるので注意が必要です。
子どもはとくに影響を受けやすい
グリホサートは、神経毒性のある有機リン系農薬に分類されています。
有機リン系農薬は精神障害や記憶障害などを引き起こす危険も指摘されており、なかでも大人より子どものほうが影響を受けやすいといった声もあります。
2012年12月、『米国小児科学会』はこどもの農薬ばく露を減らすべきとの公式勧告を発表しました。
つぎをご覧ください。
食卓の危機:遺伝子組み換え食品と農薬汚染|安田節子 著
- 有機リン系農薬に胎児ばく露すると、3歳でADHDや自閉症の前駆症状を示す(2006)
- 小児がんのリスクは、15歳まで農薬を多用する地域に住んでいた子どもが高い(2008)
- 喘息になるリスクは、生後1年間に農薬や除草剤にばく露された子どもに高い(2004)
近年、自閉症やADHDといったワードをよく耳にしませんか。
1974年には自閉症の割合が2500人に1人と診断されていたのが、2015年にはその30倍もの割合に増加しています。
農薬と上記のような症状の増加は、関連があると考えられるのです。
ラウンドアップをはじめグリホサートを含む農薬の使用が、日本の未来を担う大切な子どもたちの健康を奪うかもしれません。
補助剤も強い毒性
ラウンドアップの主成分は「グリホサート」ですが、それ以外の成分としての補助剤も見逃せません。
フランス・カーン大学のセラリーニ氏は、補助剤がヒトの胎芽や胎盤、臍帯の細胞に対して、グリホサートよりもはるかに毒性があると指摘しました。
補助剤のなかでも強い毒性が指摘されるのが、非イオン系界面活性剤「POEA(ポリオキシエチレン獣脂アミン)」です。
界面活性剤とは本来混じりあわない水と油を混じりやすくする性質をもつ物質です。
植物の表面には水をはじくワックスなどの物質があるため、ラウンドアップの成分が植物に浸透しづらい。
つまりラウンドアップの成分を植物に浸透させるために、毒性の強い非イオン系界面活性剤「POEA(ポリオキシエチレン獣脂アミン)」が使われます。
主成分グリホサートばかりがピックアップされがちですが、補助剤も人体にリスクがあるかもしれません。
別記事でもおはなししてますが、界面活性剤は食品添加物でも「乳化剤」として使われる化学物質。
またシャンプーや食器用洗剤などにも必ずといっていいほど使用されており、安全性が疑われています。
モンサント社の闇
遺伝子組換え種子
モンサント社は遺伝子組み換え(GM)種子で世界シェア90%を占める会社でもあります。
以降遺伝子組み換えのことはGMと簡略表記します。
じつは除草剤ラウンドアップが強力すぎて、雑草だけでなく育てたい作物までも枯れてしまう問題がありました。
モンサントはラウンドアップ製造工場の廃液のなかから、ラウンドアップに耐性をもつ微生物を発見。
その微生物からラウンドアップ耐性の性質だけをとりだし、大豆やとうもろこしなどの作物に組み込んだのです。
そうしてラウンドアップに耐性をもった「GM作物」を開発したことで、育てたい作物は枯れずに雑草だけを枯れさせることが可能に。
『モンサント』は種子企業を買収して独占したり、農家に対して
- ラウンドアップ
- GM種子
をセットで売り込むことで多額の利益を得たのです。
詳しくは別記事で解説していますが、問題なのはGM作物が人体にもたらすリスクについて。
日本は世界トップクラスでGM作物の輸入消費大国なのです。
遺伝子組み換えについて
農家に自家採取を禁じた
『モンサント社』は遺伝子組み換え種子を1度購入した農家に対し、収穫した種子を翌年まくこと(自家採取)や種子保管を禁じました。
農家には1シーズンごとにGM種子を買うことを認める旨の契約書にサインを書かせたのです。
契約書にサインをしなかった農家には突然、特許権侵害の手紙を突きつけることも。
もし種子を保管した場合は、だいじな農機具を没収し、罰金の支払いを負わせたともいわれています。
モンサントは利益のためなら農家を苦しめることもためらわない、利益優先の会社ともいえるでしょう。
メディアが隠す損害訴訟問題
日本のニュースでまったくといえるほど報道されないのが「グリホサート損害訴訟」の問題。
アメリカでは除草剤ラウンドアップの使用によって悪性リンパ腫を発症したなど、健康被害による損害訴訟があとを絶ちません。
バイエル社(元モンサント)の業績発表によれば2020年2月の時点、訴訟原告は4万8600人にものぼることが判明。
将来ラウンドアップ関連の訴訟による賠償の総額は、100億ドルにものぼるといわれるほどです。
モンサントや日本政府は発がん性の根拠はない、安全性を確認したなど、一貫してグリホサートの危険性を否定しています。
ですがこれだけの損害訴訟は、グリホサートに危険性があるとする、なによりの証拠とも捉えられるのです。
裁判で暴かれた秘密文書
2018年8月、アメリカの裁判で大きく流れを変える判決が下されました。
ラウンドアップの使用によって非ホジキンリンパ腫(がんの1種)を発症したとして、校庭管理人の「ドウェイン・ジョンソン氏」がモンサント社に損害賠償をもとめました。
なんとこの裁判で『モンサント』は、グリホサートががんを引き起こす可能性があることを知っていたとする、秘密文書が明らかになったのです。
がんの可能性を知りながらこれを隠し警告しなかったとして損害賠償「2億8900万ドル(約320億円)」が認められました。
モンサント社(現バイエル)の上訴もあり、最終的には損害賠償「2050万ドル(約27億円)」で確定。
モンサントはラウンドアップの危険性を知りながらも、販売していたわけです。
モンサントはやはり農家や市民の健康など考えず、利益優先の悪徳企業といってもおかしくありませんね。
外国と日本の対応の違い
多くの国がグリホサート規制強化
この話も日本では報道されませんが、ヨーロッパをはじめ多くの国が、ラウンドアップを含むグリホサート系農薬の使用を規制・禁止しています。
食卓の危機:遺伝子組み換え食品と農薬汚染|安田節子 著
- コロンビア:グリホサートを主成分とする製品の散布を禁止
- ドイツ:GM作物の栽培禁止と、2023年末までにグリホサート禁止を決定
- ベトナム:新規輸入の禁止(2019年3月)
- ルクセンブルク:2020年2月1日、グリホサートを含む製品の販売を禁止
上記のほかにも
- イタリア
- スリランカ
- チェコ
- フランス
- オーストリア
- フィジー
など多数の国が規制や禁止の方向に向かっています。
このような事実が日本で報道されないということは、農薬製造企業と日本政府・日本メディアが裏でつながっているのかもしれません。
日本は残留基準値を大幅緩和
厚生労働省は2017年末、グリホサートの残留基準値を大幅に緩和しました。
2023年10月時点でも、『厚生労働省』のページから品目別に残留基準値を確認できますが、残念ながら変化は見られません。
改正前と改正後の数値の変化はつぎをご覧ください。
農作物 | 改正前 (2016年まで) | 改正後 (2017年末以降) |
ごま | 0.2ppm | 40ppm |
ひまわり種子 | 0.1ppm | 40ppm |
小麦 | 5ppm | 30ppm |
そば | 0.2ppm | 30ppm |
ライ麦 | 0.2ppm | 30ppm |
トウモロコシ | 1.0ppm | 5.0ppm |
そば・ライ麦は改正前の150倍、ごま200倍、ひまわり400倍など、改正後のグリホサート残留基準値が異常なことはわかりますよね。
農薬の被害を受けるのは農家だけではありません。
われわれ消費者も食べるものには気をつけたいところです。
アメリカの残留基準値にあわせた
なぜ日本が極端にグリホサート残留基準値を緩和したのか。
答えは単純です。
国際基準の変化にともない、日本も国際基準にあわせたからです。
日本はアメリカやカナダなどから農作物の輸入に頼ってきました。
国際基準より日本の基準が厳しいと輸入できなくなるので、残留基準値を緩和したわけです。
日本がアメリカにあわせるのではなく、アメリカが日本にあわせるべきだと思いませんか。
第2次世界大戦で敗れた日本は、アメリカのいうことに逆らえないなどの事情もあるかもですが…。
まとめ|有機農家を応援しよう!
この記事ではラウンドアップがもたらす人体への影響や、ラウンドアップを開発した『モンサント社』がどんな会社なのか解説しました。
要点をまとめるとつぎのようになります。
- 動物実験では発がん性が確認され、研究論文では危険性が指摘
- 農薬のばく露により、子どもの自閉症や発達障害などが近年増えていると考えられる
- モンサント社は「有効成分グリホサート」に発がん性のリスクがあると知っててラウンドアップを販売していた
- 先進国をはじめ開発途上国でさえグリホサートの使用を規制・禁止
- 主要輸入国のグリホサート残留基準値緩和を受け、日本は基準値を極端に緩めた
日本で流通する小麦やそば、ごまなどの主要農作物は、2017年末以降グリホサート残留基準値が異常に緩和されました。
日本の一般的なスーパーで買える野菜やくだものは農薬まみれで、日々食べると体に悪影響がおよぶかもしれません。
農薬のリスクから自分や子どもの身を守るには、
- 国産の農作物
- 化学農薬や化学肥料を使わず育った有機農作物
を選ぶことでリスクを大きく減らせます。
また有機野菜や有機くだものを買うことは、貴重な有機農家さんを応援することにもつながります。
農薬の危険性に気づいたみなさんで、日本の農業・子どもの未来をよりよくしていきましょう!
最後までお読みいただきありがとうございます。
参考URL:
世界中が禁止するラウンドアップ 余剰分が日本市場で溢れかえる|長周新聞
除草剤「ラウンドアップ」と主要成分グリホサートに関する現状について。グリホサートの安全性に対するさまざまな見解。|Think and GrowRicci
【アメリカ】バイエル、2023年に米国でのラウンドアップ販売終了。訴訟リスクでの判断|Sustainable Japan
食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について|厚生労働省
参考文献:
食卓の危機:遺伝子組み換え食品と農薬汚染|安田節子 著 日本では絶対に報道されない モンサントの嘘 ―遺伝子組み換えテクノロジー企業の悪事—|ブレット・ウィルコック(著)船瀬俊介(監修)