ネオニコチノイド系農薬って人体にどんな影響があるの?
そもそもネオニコチノイド系農薬って?
日本では、さまざまな野菜や果物を育てる際に害虫防除として、人には影響はないとするネオニコチノイド系農薬が使われています。
ところが、ネオニコチノイド系農薬は発達障害などを引き起こすおそれがある大変危険な農薬です。
そんな危険な農薬に汚染された農作物は私たちの食卓にあふれかえっています。
つまり、知らずのうちに体に毒なネオニコチノイド系農薬をとり入れてしまっているのです。
この記事では、
- ネオニコチノイド系農薬にはどんな特徴があるのか
- 人体への影響・危険性について
- ネオニコチノイド系農薬に対する日本と海外の対策のちがい
- 解毒することはできるのか
などについて徹底解説していきます。
この記事を読めば、ネオニコチノイド系農薬の危険性について理解が深まり、自分や大切な人を守る知識を身に付けられるはずです。
ネオニコチノイド系農薬についてあまり知らない方やよりくわしく知りたい方はぜひ参考にしてください。
別の記事でも農薬に関する情報を発信しています。
くわしくは👇の記事をご覧ください。
【超危険な農薬】使用率トップの除草剤ラウンドアップが人体にもたらす影響
神経伝達を狂わすネオニコチノイド系農薬
日本で有機リン系農薬(除草剤ラウンドアップ(主成分グリホサート)など)についで2番目に使用量が多いのがネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)です。
1990年代、有機リン系農薬が開発されたよりあとに、ネオニコチノイド系農薬はつくられました。
昆虫の神経伝達を阻害して弱らせることができる毒性の強い殺虫剤。
しかし、人の神経伝達も狂わせることが問題となっており、世界各国で規制や禁止されています。
日本政府側の言い分としては、
「残留基準値以下だから摂取しても大丈夫」
「虫は殺すが人には安全」
などと主張していますが、はたしてほんとうでしょうか?
農薬取締法にもとづき、ネオニコ系殺虫剤として登録されている7つの化学物質
- イミダクロプリド
- アセタミプリド
- ニテンピラム
- チアメトキサム
- クロチアニジン
- ジノテフラン
ミツバチが大量死・失踪
ネオニコチノイド系農薬が使われはじめたタイミングで、ミツバチが大量死、ミツバチを見かけなくなったという現象が世界中で起こりました。
農作物を育てるうえでミツバチの受粉は重要な役割をはたすため、これは大問題に発展。
この原因についてさまざまな見解がなされましたが、ネオニコ系農薬が原因であることが科学的に証明されました。
ネオニコチノイド系農薬とミツバチ大量死・失踪について深掘りした記事はこちら。
3つの特徴
ネオニコチノイド系農薬は、無味無臭、無色透明なので見た目では農薬が使われたかどうかがわかりません。
また、ネオニコチノイド系農薬には3つの特徴があることで知られています。
- 浸透性:根や葉、茎、果実に浸透し、洗ってもおちない
- 残効性(農薬の効果の持続性):残効性がたかい。農薬の使用量が少量で済むので、減農薬栽培として多用
- 神経毒性:学習・記憶障害、自発性行動の障害。とくに成長期のこどもの脳の発達への影響が懸念されている。
ネオニコチノイド系農薬は農産物の栽培の際に使用されるだけでなく、シロアリの駆除など幅広く用いられています。
浸透性・残効性があるため、1度撒けば殺虫効果は長く継続します。
ネオニコチノイド系農薬がもたらす人体への影響
ネオニコチノイド系農薬は、子どもから大人まで悪影響をおよぼします。
とくに子どもの場合、すこしの量でも影響を受けることが明らかになっています。
ネオニコチノイドは神経毒性のある薬剤なので、神経伝達を狂わせます。
これにより脳のはたらきが狂うことで発達障害や、記憶・学習障害などを引き起こしやすくなります。
また、ネオニコ系農薬のばく露だけでなく、あわせて有機リン系農薬(グリホサートなど)の両方ばく露するとさらに毒性が強まることも研究から明らかになっています。
ネオニコが原因で引き起こされる病気や障害
- ADHD(注意欠如多動性障害)
- 自閉症スペクトラム
- 学習障害(LD)
- 先天異常
- ぜんそく etc…
2019年6月、北海道大学の池中良徳准教授や平久美子氏ら研究グループによると、
安田節子 著.「9.日本でネオニコ使用増加とともに発達障害が増加」.『食卓の危機』.三和書籍,2020年10月19日発行
- 日本人は胎児期(妊娠後9週目から出産までの期間)からネオニコチノイド系農薬のばく露を受けている
- ネオニコチノイド系農薬は胎盤関門をとおり母体から胎児へ流れていく
- ネオニコチノイド系農薬の摂取源は飲食物である可能性がたかい
ことなどが発表されました。
最近は自閉症やADHDなどの発達障害が増えていて、耳にもよく入ってきませんか?
とくに小さいお子さんを家庭にもつ方や妊娠中の女性はネオニコ系農薬に対して注意深くアンテナをはりましょう。
禁止や規制が進んだ海外
まずは、こちらをご覧ください。
安田節子 著.「4.禁止や規制に取り組む国際社会」.『食卓の危機』.三和書籍,2020年10月19日発行
- EU:2018年4月、イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジンの3種のネオニコ系農薬について屋外全面禁止を決定
- フランス:2018年9月よりすべてのネオニコ農薬を禁止
- アメリカ:2015年、ネオニコ3種(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム)を中止
- 韓国:2014年、EUの動きをもとにネオニコ3種を使用禁止 etc…
このほかにも多くの国がネオニコチノイド系農薬の規制や禁止といった対応をとっています。
とくにフランスは世界ではじめて、すべてのネオニコチノイド系農薬の使用を禁止したすばらしい国です。
ところが日本はどうでしょうか?
日本の対応については後述しますが、日本人の体の心配など無に等しいといえるのが日本の現状…
欧州委員会による革命的な戦略
欧州委員会は2030年までに農薬の使用量を半減させ、有機農業拡大というめざましい目標を掲げています。
この話はネオニコ系農薬だけのことではなく、「あらゆる危険な農薬の使用を減らしましょう」という取り組みです。
具体的な目標は以下をごらんください。
安田節子 著.「12.急がれる脱農薬社会への転換」.『食卓の危機』.三和書籍,2020年10月19日発行
- 化学農薬のリスクと使用の50%削減
- 肥料使用量の20%削減
- 有機農業を25%に拡大
2017年時点、イタリアの有機農業取り組み面積はすでに15%以上となっています。
2030年までに「有機農業を25%に拡大」という目標も現実味を帯びています。
ちなみに日本の有機農業面積はわずか0.2%なので、この差は歴然。
ヨーロッパとくらべれば、日本の農薬に対する意識の低さが露骨に垣間見えます。
世界と逆行する日本|基準を緩和
世界各国がネオニコチノイド系農薬の使用を規制、または、禁止しています。
しかしながら、日本だけは2015年〜17年にネオニコ3種とアセタミプリドの基準を緩和。
また、スルホキサフロルの新規承認までしています。
参考までにつぎの表をご覧ください。
アセタミプリドの残留農薬基準値
(単位:mg/kg)2023年2月1日時点
農産物 | 日本 | アメリカ | EU |
---|---|---|---|
いちご | 3 | 0.60 | 0.5 |
茶葉 | 30 | 50.0 | 0.05 |
たまねぎ | 0.2 | 0.02 | 0.02 |
トマト | 2 | 0.2 | 0.5 |
日本のアセタミプリドの残留農薬基準値は
- いちご:日本3mg/kg|EU0.5mg/kg(日本はEUの6倍ゆるい基準)
- 茶葉:日本30mg/kg|EU0.05mg/kg(日本はEUの600倍ゆるい基準)
といった具合でEUにくらべとんでもなく基準がゆるいことがわかりますよね。
農林水産省は、ネオニコチノイド系農薬の規制をしない理由として、EUと日本では農薬の使用のしかたが違うことや、EUと日本では気候が異なり、日本では害虫の発生が多いとしています。
農薬をまったく使用せず栽培している農家もいますし、これらが規制をしない理由なのはおかしな話です。
国民の健康を第一に考えるのであれば、無農薬栽培を推奨、もしくは無農薬農家を支援するような取り組みをおこなってほしいものです。
やはり農薬を販売することでえられる利益を優先しているのでしょうか。
すくなくともこの野菜はなんの農薬が何回使用されたかが消費者にわかるような表示制度がつくられるべきです。
脱ネオニコをもとめる市民活動
アメリカでは子どもたちのアレルギーや発達障害の以上な増加に対し、農薬を販売する小売業者に親たちが販売中止をもとめる活動がありました。
また、アメリカでは環境保護団体などの活動も活発。
2015年にホームセンター大手の「ロウズ」が4年間でネオニコ系農薬関連商品を排除すると発表もありました。
2016年、「コストコ」は自社販売の植物においてネオニコ系農薬の使用を禁止し、有機栽培の商品取り扱いを増やす活動をしています。
脱ネオニコ活動|日本の場合
日本では、国レベルで脱ネオニコの動きは残念ながら見られません。
ところが、市レベルでは脱ネオニコの動きがあるのです。
ここでは、群馬県渋川市の取り組みを紹介します。
2014年7月、全国に先駆け有機リン、ネオニコを使用しない農作物の認定制度「選別農薬農法」をつくられました。
有機リン剤、7種のネオニコチノイド系農薬などを使用しない安心・安全な農作物を学校給食で積極的に子どもたちに提供されています。
脱ネオニコのわな
近年日本では農薬削減のためにネオニコチノイド系農薬の使用がすすめられています。
農薬削減といっておきながら、ネオニコチノイド系農薬をすすめることは矛盾していますよね。
これはどういうことか?
ネオニコは農薬のなかでもきわめて毒性が強く、残効性があり効果が長続きします。
つまり、1回の使用だけで効果絶大なので農薬の使用回数を減らせるというわけです。
ほかの農薬だと複数回使用する必要があるため、表向きは農薬削減といえるのです。
特別栽培もネオニコの毒性や残効性を利用して農薬使用回数を減らしている場合があるので注意が必要です。
ネオニコ系農薬という毒を使用しているという問題は解決されていませんから、「農薬削減」、「特別栽培」は必ずしも安全ではないことを忘れないでください。
特別栽培とは慣行栽培(通常の農薬散布回数)にくらべて、化学合成農薬、化学肥料の散布回数が5割以上減らして栽培されたことをいいます。
いまからでも遅くない|オーガニック生活で農薬をデトックス
いままで散々農薬まみれの野菜やら果物を気にせず食べてたから、自分はもう手遅れかも…
そんなことはありません。
日本の研究では、有機食材をとり続けると比較的短時間で農薬を体外排出できることが明らかになっています。
アメリカの研究でも1週間、かんぜんにオーガニックな食事をとるだけで体内の農薬レベルを劇的に減らせることもわかっています。
また、海外では食品添加物や農薬をなるべく避けたことで子どもの発達障害が改善したという事例もあります。
無添加生活、有機・オーガニック生活をたった1週間前後という短期間つづけるだけで、おおきく改善できる可能性がたかいのです。
これから無添加、有機・オーガニック生活をはじめてみようという方へ。
100%無添加食品、オーガニック食品を選ぶ必要はありません。
まずは、料理の際に必須な調味料や野菜からオーガニックなものを選ぶとよいでしょう。
まとめ
この記事では、ネオニコチノイド系農薬の危険性について徹底解説してきました。
ネオニコチノイド系農薬についてのおはなしのなかで重要なポイントはつぎの通りです。
- ネオニコチノイド系農薬は人の神経伝達を狂わせ、脳に悪影響をもたらすことで発達障害や記憶・学習障害がひきおこされる
- 子どもはとくに影響をうけやすく、低用量のばく露でも病気や障害をひきおこす
- 胎児期(妊娠後9週目から出産までの期間)から母親がばく露すると赤ちゃんもばく露する
- 世界各国でネオニコは規制や禁止がすすんでいる
- 日本は世界と逆行し、規制をゆるめている
世界各国でネオニコチノイド系農薬が危険視されているなか、日本は規制を強化するどころか近年規制を緩和している現状です。
日本では数少ないですが、農薬がもたらす人体への影響を理解し、無農薬栽培に取り組む農家もあります。
そんな貴重な農家さんを応援する意味でも無農薬野菜を選ぶことが自分やたいせつな人を守ることにつながります。
もし、まわりにネオニコチノイド系農薬の危険性を知らない人がいれば、積極的に広めていきましょう。
さいごまでご覧いただきありがとうございます😊
参考:
食卓の危機 遺伝子組み換え食品と農薬汚染|安田節子 著 知らずに食べていませんか?ネオニコチノイド増補改訂版|ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 監修/水野玲子 編著今さら聞けない「ネオニコチノイド系農薬問題」。脱ネオニコへの動きについて。|Think and GrowRicci
日本のオーガニックはなぜ遅れているのかーアグリビジネス論Vol.9|農むすび
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